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2013年1月22日 (火)

教材教具開発の力量どう身につけるか(井出 耕一郎)教育科学「理科教育」1987.12No.244

 1 教材・教具とは何か
 教師が授業をするにあたって,教材を研究し,教具を活用できなければ,その授業の目標を達成すること:ま困難である.そして教師の中心的な仕事が子どもたちの学習指導にあるとすれば,教材・教具を十分に活用できることは教師のもっとも大切な能力の一つということができよう.
 ところで教材・教具という言葉で教具の方は比較的わかりやすいが,教材という言葉の意味内容はあまり明瞭ではない.教材は教えるために必要な材料という意味を持っているが,この材料という言葉を広く解釈すると,教育に必要な資料,施設の一切を含めることができる.十もう少し狭くとって,学校教育法第21条をもとにすると教材とは教科書,それ以外の図書,その他の教材とされている.このその他の教材は文部省の教材基準に示されたもめを見ると各教科の共通教材として,スライド映写機,オーバーヘッドプロジェクター等の視聴覚機器,各教科の教材としては理科では理科教育振興法による設備規準に.基づくものとされており,これは明らかに教具を含めている.
 また学校で普通教材研究という場合には当面の教授対象となる特定の単元についての指導内容やそれに必要な資料と考えられている.そしてこの場合も教科書,実験材料などを含めて考えることが多い.
 このように教材という言葉を広く解釈して使用することは,ある意味では便利であるが,教材・教具の研究や開発を考える場合,それぞれをより限定して扱った方が意味が明瞭になって考えやすい.
 ここであげた教材の中に,教授・学習過程において教師の立場からいうと指導内容,子どもたちの立場からいうと学習内容に関係するもので,物体や物質でない情報的なものと,物体や物質でできた具体的なものとがある.そこで,この具体的な物体あるいは物質からできているものを教具,情報的なものを狭い意味で教材とすると,その区別がはっきりしてくる.つまり教材とは次のようなものである.                .
 「教師が教育目標を達成するために,自然の事物・現象の中から適当と思うものを選択し,これを指導に適するように構成した具体的な情報的内容を教材という」ここで具体的な情報的内容としては,教科書の記載内容や生徒実験の内容,視聴覚教育におけるスライドやビデオテープ等の内容,演習問題などが含まれる.
 理科では自然界の事物・現象を扱うが,これは一般には無数にあって,そのまま直接生徒に提示しても理解されにくいものが多い.そこでこれをある教育的意図のものに構成することによって理解されやすくなり,子どもたちの活動を促すことができる.このなまのままの自然の事物・現象を素材といい,教育的意図のもとに指導に適するように構成したものが教材である.この素材を教材にかえることを素材の教材化というが,これは教材開発の重要な場面になる.
 教具は物体や物質でできた具体的なものといったが,別のいい方をすると教育に必要な物的資料および用具ともいえる.理科教育では観察や実験のために多くの教具を使用するが,その種類は他のどの教科より多いと思われる.
 その点でも教具の活用,開発は理科教師の大切な仕事である.
 ところで教材を具体的な情報的内容いわゆるソフトなものとし,教具を物的資料及び用具いわゆるハードなものとするとこの両者は一応の区別がつくが,同じものでも見方によって教材になったり教具になったりすることがある.スライドのフィルム,0HPのTP,VTRのテープなどはその内容が教育的意味をもてば教材といわれるが,物として見れば教具である.生物の観察や実験に使用する動物や植物,地学で扱う岩石や鉱物√化学で扱う薬品などは通常教材といわれるが,これは観察や実験に使う教材という意味でいわれるので,上の分類からいえば教具に入れるべきであろう.教材と教具はひっくるめて教材教具として扱われることが多いが,はっきり区別して扱うことは可能で、ここではそのように扱うことにする。
 2 教材・教具開発の必要性と開発の視点
 わが国では文部省で作成公示された学習指導要領で,その教科の指導内容が小学校,中学校,高等学校それぞれに応じてきめられ,これに従って具体的な教材として教科書が民間会社によって作成される.この教科書はその編者または著者,それぞれの考え方に基づいている昿基本的には全国的な一般の指導に適するようにつくられている.
 教師が授業をする場合,一度はなるべく教科書に忠実に従ってやってみることをすすめたいが,これは教科書の著者の意図を理解し,自分の指導に役立てるためである.しかし,やってみるといくつかの点でよりよい方法があるのではないかという気がすることがある.これはさきにも述べたように,教科書は一般的な児童や生徒を対象として,一般的な教師が指導することを想定しているが,実際には特定の教師が特定の学校で,特定の児童や生徒を対象として指導しているからである.もちろん教師は教科書に示された教材研究を行って,自分の受け持っている児童や生徒の指導に適するようにしていくか,教材によっては教科書と別の内容のものを考えた方が,指導上有効であると考えることがある.理科の場合,物理的教材,化学的教材でもこのようなことがあるが,生物的教材や地学的教材ではその地域の特殊性をうまく利用できるので特にその傾向が大きい.また教材を研究しているうちに,新しい指導法を考えたとしよう.これに適するような教材は今までのものと異ったものの方がよいとすると,新しい教材を工夫しなければならない.このように教師が教材の研究を行っていると,それをもう一歩あるいは二歩進めた教材の開発を試みる必要性にせまられることがある.そこで教材開発はどのようにするか,その視点をあげてみよう.
 教材開発は教材研究の延長上にあると見られるので,その視点は教材研究とも関係があるが,次のようなことが考えられる,
 1 指導目標を明らかにして,その指導のためにどのような教材が適切であるか考える.
 2 教材の内容や配列が児童や生徒の発達段階を考え,その思考の流れにそうように留意して開発する。
 3 教材が自然科学の基本概念とどのようにつながっているかを検討して開発する.
 4 教材が科学の方法や探究の技法(Process skills)の何の指導に適するかを考えて開発する.
 5 新しい指導法を考えた場合,それに適するような教材を開発する.たとえばプログラム学習を計画した場合,生徒用のプログラムを開発することなどである,
 要するに教師は自分が児童や生徒に何を指導したいのか,その目標をはっきりとらえて,それに適した指導法を考え,もっとも効果的と思われる教材を開発していくようにするわけである.
 次に教具の開発であるが,理科は学習活動に多くの観察や実験を取り入れており,またそうしなくては学習効果があがらない.そこで理科教育振興法乃設備基準にもあげられているように,非常に多くの種類の教具が市販されている,これらを目的に応じて使いこなすことは理科の教師に必要な能力の一つである.そこで実際にこれらの教具を使用してみると,いろいろと不満足な想いをすることがある.これは市販の教具はていさいよくできているが,商品価値を高めるために不必要なものがついていたり,一般性をねらうあまり万特定の目的には使用しにくかったり,生徒実験用として多数そろえるにはあまりに高価であったりすることがあるからである.また教具はあくまでも教材の中に組み入れて使用するものであるから,新しい教材を開発した場合それに必要な教具は市販されていないことがある.
 このような場合,教師は適切な教具を自分で開発していかねばならない.また,教具の開発は教材の開発とともに教師の創造性が発揮されるところで,教師が開発し自作した教具を学習指導に使用することは,児童や生徒の興味を刺激し,充実した授業を行うことができるだけでなく,・児童や生徒の創造性の開発につなぐこともできる.
 いわゆる自作教具は経費の不足を補ったり廃物利用的な意味もあるが,もっと積極的に授業の効果をあげ,作成する教師はもちろん使用する児童や生徒にもよい影響を与えるものである.しかしこれは市販教具が価値がないというのではなく,自作教具にはない長所(たとえば測定器具の精度は自作のものよりはるかに高い)も多いので,それを活用するとともに教師の開発した教具で補っていくことが望ましい.
 教具の開発の必要性は以上のような点から考えられるが,開発の視点を次にいくつかあげてみよう.
 1 教具は教材に基づいて使用されるものであるから,先ず教材を十分に研究して,指導内容に適したものとする.         j
 2 構造が簡単でわかりやすいものにする.
 3 生徒が使用する教具は,使いやすくて丈夫であるごと.
 4 経費ができるだけかからないもの 廃品利用も考える.
 5 一般に入手しにくい特殊な材料を使用することは,是非それでなければならない場合以外はさける.
 6 あまりに多目的なもの,特殊な目的に使用するものはさけた方がよい
 7 定量的な実験に使用するものは,必要な精度を与える.
 3 教材・教具開発の力量をどう身につけるか
 教材・教具の開発は理科の教師にとって必要な能力であるが,これも人によって得意な人とそうでない人とがある.それではどのようにすればその力量を身につけることができるか,先ず教材について考えてみよう.
 1 従来の教材について,その指導目標,指導方法を十分に研究する.教寸詞発は教材研究から始まるものであるから,従来のものの意図,長所・短゛等を十分に研究してそれの改良,あるいは新しいものを工夫する.
 2 自分自身の指導目標を明確にし,その目標が科学概念の指導か,探究こ過程か,それともこの両方かを考え,それによって教材を開発する.
 3 指導目標に対して,どのような素材が教材になり得るか考える.この場合,その地域に関係の深いもの,あるいは特有の素材を教材化することはムヽ結果を生むことが多い.
 4 指導目標を達成し,児童,生徒の関心をひくような観察教材,実験教建.視聴覚教材等にどのようなものがあるか考え,必要に応じ開発する.
 5 素材を教材化したらどのような指導が可能であるか考える.たとえば食塩と水とを使ってどのようなことが指導できるか考えてみるなどである.
 6 理科教育,自然科学関係の雑誌,専門書,児童・生徒向けの科学関係こ言物等を見て教材開発のヒントを得る.
 7 学校内外の研究授業や研究会等に参加して,他の教師の教材観や教材研究の実態を知り,自分の教材開発の資料にする.
 8 新しい指導法を工夫し,それに適するような教材を開発する.たとえ科学史を導入したいと思えば適切な読み物をつくり利用するなどである.
 9 科学博物館や展覧会等を見学すること仏教材開発のヒントを得るのに役立つ.  
 以上あげたように教材開発は,自分の指導目標を明確にして,何を指導したいかをつかむことが第一で,次にそれに適した教材を素材から組み立てていくのが基本である.そして常に教材開発の眼ですべての素材を見るように努力することが必要で,これが同時に教材開発の力量を身につけることになる。
  次に教具開発については次のような方法が考えられる.
  1 指導目標と指導方法√教材との関係をよく考えて,どこでどのような目的に使用する教具かという立場で考える.
  2 市販の教具を使用してみて,そのどこを改良すればよいか考える.
  3 今まで使用されている教具を別の目的に使用できないか考える.
  4 今まで使用されている教具の部分を利用したり,他と組み合せて使用することを考える.
  5 今まで教具として使用されていない材料や薬品等を使用して,新しい.教具を工夫する.たとえば使い捨て注射器で手動式真空ポンプをつくる(石井聖昭・昭和59年度東レ理科教育賞)などがある.
  6 家庭用プラスチック容器等の廃品,市販の台所用品,玩具などを教具 として利用できないか,常に考える.使用ずみ容器なども同形のものが数多 くあると意外と役にたつことがある.(フィルムケース等)
  7 新しい指導法や,教材を工夫したとき,それに適合する教具を工夫する.たとえば化学実験にセミミクロ法を取り入れたとき,実験器具を小型で 使いよいものを工夫するなどである.
  紙面の都合で具体例をくわしくあげられなったが,個々のものについては 理科教育関係の雑誌に関発例がのせられていることが多く,東レ理科教育賞 授賞作品集なども参考になるよ         <千葉大学教育学部講師>

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