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2013年1月22日 (火)

素材選びの力量どう身につけるか(鈴木清龍) 教育科学「理科教育」1987.12 No.244

 1 直観的に“素材とは何が
 いつも新しいアイデアにみちた授業をつくるK先生と話しあった.「素材って何だ,素材の教材化というコトバがでているのだけれど乱」「これは授業に使える!」「これで何かやれそうだなー.」「これがあるとあそこの授業がうまくやれる!」という勘が働らくのが素材だという.まだ授業に使ってみないのだけれど,ものがあるとイメ-ジがわいてきて,構想が具体的になってくるのだという.物と授業が通っているのだ.
 私たちの仲間の先生はいろいろなものをみっけてきて自慢をする.よくはずみそうだが机におとすとポトフとくっついたようになって,はねかえらない玉.何に使うの? これから考える.(だけども彼の頭に牒授業とのつながりがつきかけているにちがいない.)デパートに行ったら,オモチャ売場や食器・家庭用品のフロアー,街を歩いたら金物屋や文具店,アイデア商品の店による.上京したら東急ハソズや秋葉原,合羽橋で有金をはたいてくるといった仲間たち.日曜大工の店が大好きな仲間たち.“物ども”のタレントをピンと感じとって,授業の舞台にのせるのは,俳優を育てるのがうまい演出家と同じだ.
 2 たてまえ的に“素材の教材化”
 素材というコトバが,とりたてて出されてくるのは,52年の学習指導要領が契機になる.それまであった特定の素材(たとえば頭酸・石けん・イネ…など)の表記がなくなった.昭和53年に出た小学校指導書理科編(文部省)」では,指導要領改訂の要点として,「各地域の自然環境や児童の実態に即し各学校における創意を生かした教育課程を編成し,指導の工夫ができるように内容の取扱いにおける留意事項の記述は最小限にとどめ,学習指導に用いる素材の表記は行わないことにした」と書いている.
 昭55年にでた文部省の「指導計画の作成と学習指導(小学校理科指導資料)」でも「素材の表記のないことから,モの地域の自然環境から適切な素材を選択したり,内容の教材としての意味付けを検討することによって,これまでに扱われてきた素材を見直したり,新らしい素材を積極的に開発したりする.ややもすると,これまでにあった素材の扱い方から脱し切れない場合があるが,内容の検討から始めて,児童の創意が生かされ,学習上の効果が上るような努力をしたい.例えば,B区分の内容にある「物」について言えば,それを一つにするか,複数にするか,あるいは,物の提示を順序付けることによって一般化を図るかなど,教師自身の創意にまつ面が多い.」と述べている.教師の創意ある実践を期待している.
 同書には各学年の指導事例が学習指導要領の目標と内容,素材の選択,児童の実態の想定,指導計画,実践と考察という構成で例示してある.
  第1学年 草や木の実と落ち葉
  第2学年 おもりで動くおもちや
  第3学年 空気でっぽう
  第4学年 流れる水のはたらき
  第5学年 星の動き
  第6学年 植物とその環境
  第6学年 地層
 だから,上の題で各自指導計画を作って,比較検討してみるのは創意くらべの演習課題として面白い.ひとまず,上のそれぞれで,何か素材か考えてみていただきたい.できるだけ,異をたて,こだわること.たとえば,星というと太陽や月ははいるのか,「星」なのか「星の動き」なのか,など.
3.「空気てっぽう」の素材はなにか
ズバリ、第3学年「空気てっぽう」の事例で考える
学習指導要領の目標・内容・第3学年の内容B(1)
閉じ込めた空気に力を加えたときの様子を調べ,空気に弾力性があることを理解させる.
 ア 空気を圧し縮めると,かさが小さくなるが,手ごたえは大きくなり,元にもどろうとすること.また,この性質を利用して物を動かすことが,できること.
 イ 空気は圧し縮められるが,水は圧し縮められないこと.
 この目標内容でのおもな素材は何だと考えますか.この目標内容で,もし教科書を書いたとして,題を何とつけますか.(現行の6社で,4種の題名があります.)
   「紙玉でっぽう」  信濃教育会
  「空気でっぽう」  東京書籍・大日本図書・啓林館
   「空気と水」    学校図書
   「空気のはたらき」 教育出版
  「指導計画の作成と学習指導」のこの部分の筆者は次のように書いている.
 「閉じ込めた空気に弾性があることを理解させるには,
① 空気を閉じ込める物が必要である.(筒)
② とばすものが必要である(玉)
①の素材としては,ポリ袋,ポリ容器,空気でっぽう,注射器,かん腸器などが考,えられる.
②の素材としては,紙,野菜などが考えられる」と.そして,透明な筒を使った空気でっぽうを全体を通して使い,ジャガイモ玉とキウリ玉を比較して玉のとぶわけを追求する。
4 「国民学校理科」の克服
  「紙ダマ鉄砲」という題の教材は戦時中の昭和15年,国民学校初等科理科4年にはじまる.類題でいまも生命を永らえている.教師用書の目的には 「紙ダマ鉄砲」(5時限)」「目的・紙だま鉄砲をつくらせ,たまをうって遊ばせる間に,工夫・考察の力,ものごとをきぱめる態度を養ひ,空気の存在,空気の圧力の利用について知らせる.」となっている.
 竹で紙だま鉄砲をつくり玉がよくとぶように工夫すること,なぜ玉がとぶか考えることという目的・目標.・学習活動がセットになり分離できない強制力をもつことにたった.(ほかにも「おきあがりこぼし」という教材がありいまの「おもりで動くおもちや」となって生きている.)おしちじめられた空気の弾性を教えるのならもっと別な方法があるではないかという教師の疑問に対して「つくる活動と工夫をとおして」でなければならぬという思想が権威をもった。
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 しかし,国民学校以前は,明治41年以来の尋常小学理科書では「空気の性質」という題で,「要旨」として「空気の性質を教え,之によりて気体一般に」性質を知らしむ.」「教授事項1空気の場所を占むること 2空気の圧縮せられ易きこと」があげられてあり,「実験」として,BとCが例示されていた.それより以前の,たとえば,後藤牧太等の「小学校生徒用物理書明治18年」(気体の性質)には,B(但しフラスコではなく,びん)とDの空気鉄忿で,空気の圧力を教えるようになっていた.Aも多くの教授法参考書にのっている。
5 日標・内容の検討・科学と児童の実態に即して
 昭和34年学習指導要領で「押しちじめられた空気がもとにもどろうとする力は,手ごたえや力を受ける物の動きでわかる(小3,   B(2)イ)」となったのに,あいかわらず,紙玉鉄砲でなければならないとする主張に対して高橋金三郎(当時東北大)は,「新らしい紙玉鉄砲」としてマヨネーズの容器を使った方法を提案した.(昭和38年「やさしくて本質的な理科実験」第1集・科は,ポリ容器を押したら空気が物を押すことがよくわかる.管の方はマッチとのまさつがなくよく飛ぶ.コルク栓を殺す(やおらかくする),ボーラーで穴をおけるという化学者の基本操作を学ぶ。
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(これまでの紙玉鉄砲のとぶわけは教師もよくわかっていない.空気の圧縮されて押しかえす力だけではなく先玉は静止まさつで止っていて,動きはじめてからの運動まさつが小さいので加速されること,そのためには,ある距離が必要なことなど)何のために,何を,どう教えるか,を科学にてらし,子どもに教えてみて考えるという研究運動がようやく力をもちはじめた.
 「おしこめられた空気」を素材として,それが示す現象が学習の対象になるのなら,そのことを子どもたちはどのように知っているか,それを子どもたちに聞いてみよう」「空気をいっぱいつめこんであるもの,つめこんで使うものはどんなのがある?」
 「タイヤ」「何の」「自転車にきまってるi 自転車やバイクも」「ポンプで入れる.」「ガソリンスタンドで入れる」「スプレー」(気体の種類なんて気にしていない)「ダイバーの背負っているやつ」「酸素ボンベ」「浮き輪」「空気枕」「風船」「ビーチボール」「ゴムボート」ドプール(庭で使う)」「足でふむ(ポンプのこと)」「エヤマット」「救命胴着」「飛行船」「アドバルーソ」「コンクリートこわす」「ダダダつてやってる.」「あれ,モーターとちがう?」
 このような子どもだちとのやりとりのなかから,大きなビュール袋に小さいビ弓-ル袋に空気を入れたのをつめこむととても丈夫にできる工夫がうまれた.(「空気に構造をつくる」といっている)この方法も,トいくつかの教科書にとり入れられている.
今,高価な注射器やかん腸器(こわれやすい)にかわって,使い捨てのプラスチック注射器が容易に入手できるようになった.指導要領では「圧縮されたときの弾性」だけをいっているが,「ひっぱったときの弾性」はとりあつかえないものだろうか.昔の教科書では「空気の圧力」は「大気の圧力」とあわせてあつかっていたこともある.小学3年ではやりすぎになるか.と,目標,内容は新らしい方法とあわせて検討されてよい.わかって面白いというのなら大胆に試行して評価をうけるべきだ.
 6 教科書,そのストックの活用
 目標・内容の吟味,教材化・授業での検討のサイクルは教科書にも反映する.教科書は素材の教材化された最大のストックだ.指導要領の目標内容に即するという一定の制約はあるにしろ,手っとりばやく現在の水準をクリヤーするには教科書をみわたすのが近道である.いうまでもないが,小学校で;ま,東京書籍,大日本図書,学校図書,啓林館,教育出版,それに信濃教育会の6種である.(中学校は信濃がない)といっても書店では取扱わない.教科書納入業者にきくか,教科書販売所に注文する.
 教科書展示会の会場校で保管しているのを借用するのもいい.
 個人で購入するくらいの熱意がなくて,研究成果は望めないと私は思う.
 全県統一採択に近い状況で,他社の教科書なんてかえりみない無関心無気力から回復しよう.
 7 「ものみなすべて」の発想
 理科で学ぶことは,人類が永い間に大自然から学んできた事実・概念・法則の基礎基本・エッセンスでなければならぬ.とりあえず自分が教えたこと (知ったことでもいい)で,ものみなそうか,と考えてみることは素材の発 掘,発見に役立つと思う.たとえば,三態変化で.固体の物質はみんなとろ けるか.鉄は? 金は? ダイヤモンドは.気体はみんな液体になるかレ空 気は,酸素は,ヘリウムは?.こんな問いを発するなかで,液体窒素を使う という実践が生まれた.「花の役割」を教える.「花が咲くと実ができ種子が できる.」花が咲くのはみんな実ができるか,種子ができるか.チューリップは,ジャガイモは? と自らに問いかけ,子どもにも聞いてみ七,そこから 新らしい授業がうまれる.野菜-ダイコン,ニンジソ,トウモgコシに種子 がある? 花が咲く? こう問うて,「花が咲くと実がなり種子ができる」 というルールが確かになっていく.無花果(イチジュク)にも花が咲くので はないか本当は?と考えて調べてみる.例外でなトことに喜ぶ.
  知識を一般化した命題にし,そこに適用される事例の範囲を拡張する.それは,目標に対しての内容をひろげることになり,素材のサーチを促す.そのようなサーチをいくつかやると,自分がある対象世界について何と少 ししか知らないかに気づく.元素すべてというといくつある?100種.その うち金属はいくつ?→周期表.動物すべてと考える.何種ある?どんな仲 間に分けられている? 大ざっぱでいいのだが.(植物も)→理科年表に 生物の部がついている.「動物はエサを食べて生きている」「うん」「ではみんなロがあるか,肛門があるか,消化管があるか,ウソコをするか.」「だんだんあやしくなってきた.自分もわからないけれど,子どもはどうかな.」
  こんなことも,問題づくりという形をとった素材探索であるといってい い.さて,この節で「固体は液体になる」とか「花が咲くと実がなり種子が できる」とか「動物はすべてウンロをする」というように,命題表現の形を とった.そうすると,その場合の,事例を考えやすくする.(一般的なフレー ル表現で,事例を代入して点検できる.それ払 目標に対しての内容の検討の手法である.(ふれるだけに止める.)       <宮城教育大学教授>

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